たった一枚で、部屋のイメージが変わる。
マットやラグ、カーペットにはそんな魅力があります。特に産地や製法によって表情が異なる「手織絨毯」は、知れば知るほど奥が深いインテリア・アイテムです。
手織絨毯の主な産地と地域
ひとくちに手織絨毯といってもその種類は多く、世界中で見ることができます。日本で広く知られているのは西アジアを中心にした国々のもので、なかでも有名なのが「ペルシア絨毯」 です。その起源は紀元前、現在のイランに存在していたペルシア帝国が隆盛を極めた時代にまで遡り、織り方の技術やデザインが確立されたのが、シャー・アッバス1世の時代(16世紀)と言われます。時の権力者たちに愛された品々を生み出してきた、その類まれな装飾性と高い技術は代々伝えられ、数多くの有名産地・工房が生まれることになりました。そしてその文化は、時代に合わせた新しさを取り入れながら、現在でもイラン各地で息づいています。絨毯という日常品でありながら高額品である理由は、このような歴史や背景があるからです。
一方で、もっと暮らしに根差して、つくられ続けている手織絨毯もあります。中央アジアから北アフリカまでの広い地域で、各地に暮らす人々によって織り継がれてきた生活の道具としての絨毯。たとえば日本でも広く知られている、キリムやギャベ、ベニワレンなど。素朴な味わいと個性豊かなデザインのこういった「トライバルラグ」を、上手に日本の住まいに取り入れる方も増えてきているようです。
デザインや織り方は産地で異なりますが、素材についてはほとんどがウール、もしくはシルクです。古代から羊は、衣食住の様々な場面に使われていますが、絨毯づくりにおいても欠かせない素材となっています。シルクはその希少性から、一部の高級品・装飾品に使用されてきました。ウールの温かみのある表情、シルクの艶やかで繊細な美しさ。それぞれの素材の良さや用途などを考えた上で、世界で一枚の絨毯がつくられているのです。
現代においては、このような手織絨毯にインスピレーションを受けて、産地の垣根を越えて機械で織られたものなど、世界各地でさまざまな絨毯づくりが行われるようになっています。「手織」でなくてもそれぞれに良さはありますが、やはり一度本物の手織絨毯を体感してみることをおすすめします。多くの中から自分だけのお気に入りと出会えるかもという、わくわく感はたまりません。また手織絨毯は丈夫で長く使えるという実用性もあるため、いわゆる“一生モノ”に出会えるということも。本コラムでは、皆様に自分だけのお気に入りの一枚を見つけていただけるよう、今後も世界各地の手織絨毯の魅力をご紹介していきます。